ソフトウェア製品やサービスは物品の売買契約とは違い、所有権を購入者に移転させないことが原則です。
購入者は製品やサービスを使用、利用する権利を得るという考え方です。
使用許諾契約書やサービス利用規約には、提供側が利用者にどういう権利を付与し、どのような制限を加えるかを規定します。
製品やサービスの著作権や許諾権は提供側にあり、利用者がその権利を侵害することは禁止する旨を明確にします。
したがって、利用者はこの契約内容に同意しないと製品・サービスが利用できないとするケースが一般的です。
ここがポイント!
- 同意の時点
- 利用者がどの時点で製品やサービスの使用、利用に同意したとみなされるかはそれぞれ異なります。例えば、ソフトウェアは箱のシュリンクラップを破いた時とか、インストールした時に同意したとみなすケースがありますし、ASPサービス(クラウドサービス)では申込情報が提供者に到達した時にする場合が多いです。(売買契約の成立時点とは異なります。)同意の時点によって、返品やキャンセル、課金開始などの対応が変わってくるのが一般的です。
- 個人情報の取り扱い
- ソフトウェアやクラウドサービスの利用にあたって利用者の個人情報の提供を必要とする場合は、個人情報保護のポリシーを規定した方がいいです。実際には、個人情報保護法の規制の対象になるのは一定以上の情報を保有する事業者だけになりますが、昨今の状況からすると、少なくともこのポリシーがない会社の信用度は低くならざるを得ないでしょう。
- SLA (Service Level Agreement)
- SLAは主にクラウドサービスにおいて、提供側が利用者側にそのサービスの内容、提供条件や目標などのサービスレベルを保証する規定です。SLAは、そのサービスのPRポイントや差別化の材料になる一方、免責規定も含みますので、提供側、利用者側それぞれの立場で十分チェックする必要があります。
One More Advice
利用規約をWebサイトにあげておけばそれで有効?
- Webサイトのわかりやすい場所に利用規約、使用許諾等が表示されており、それを認識しながら取引したということであれば、原則有効と考えられます。ただし、実際には「わかりにくかった」というクレームが発生する可能性もゼロではないので、申込時には必ず利用規約等に同意したことを認識してもらうような業務フローにしておく必要があります。
- また、改訂した利用規約等をWebサイトにアップすれば改定前のお客様も拘束できるか、という点について、たまに利用規約等の中に「変更があった場合には予め了承する。」という規定を見かけますが、これは基本的には有効ではありません。変更の内容を知らせずに相手方を同意させようとするのは民法の基本原則に反すると考えられるからです。